地方で働きながらの不妊治療!満身創痍

30代後半、地方で働きながら取り組んだ不妊治療の記録です。

18.不妊治療総括-⑥着床前診断

 過去記事の通り、私達夫婦は体外受精の過程で 、着床前の受精卵の染色体異常を調べる着床前診断(PGS検査)を利用した。

それは私達の不妊治療には必要なことだった。

『命の選別』等、賛否両論ある検査だが、私達夫婦がこの技術によってどんなに助けられたかをまとめてみた。

 

 

1.着床前診断に至る経緯

 1回目の採卵に向け、地方から頻繁な片道3時間通院と薬の副作用、そして仕事との両立でズタボロになった。

何とか採卵には至ったが、受精に使えそうな卵子はたった1個しか採取できなかった。その受精卵ちゃんは何とか分裂を続けてくれ、運良く初期胚移植までこぎつけられたが、結果撃沈した。

 

『あの疲労と絶望を繰り返したくない…。』

『このままでは体がもたない…。』

 

精神と肉体の両面から考え、次の体外受精では少しでも確率を上げたい!

という強い思いで、賛否渦巻くこの検査の実施に踏み出すことができた。

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そのために、まずは採卵数を増やさねば…ということで、体への負担を承知で排卵誘発方法を体にマイルドなものから、自己注射が複数回必要となる方法(アンタゴニスト法)に切り替えた。

結果、15個もの胚盤胞を得ることができた。

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そして、得られた貴重なG5 AA(グレードとしては最高ランク)胚盤胞4個を染色体の着床前検査であるPGS検査に出した。

かかったお金は¥648,000…。

その月のクレジットカードの請求額は、体外受精諸々の費用を含め100万円を超えた。

ぐふっ

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2.着床前診断の結果

 4個の胚盤胞の染色体異常を調べた結果…。

  2個:異常無し

  1個:染色体14番のトリソミーモザイク

  1個:染色体16番のトリソミー

 ※トリソミーは染色体が1本多い状態

 ※モザイクは正常染色体と異常染色体が混在している状態

 

 正常胚を得ることが出来た!これで少しは安らいだ気持ちで以降の移植に臨める…と、心底ほっとしたことを今でも覚えている。

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3.今振り返っても必要だった着床前診断

 染色体異常がある胚は、着床しても途中で流産・死産してしまう可能性が非常に高い。一部の染色体異常ではほぼ流産・死産してしまう。

 

『移植すればそれなりの確率で出産にまで至る正常胚が、私達夫婦の受精卵には一定程度含まれていることが分かったこと。』

 

これが検査を通じて得られた一番有益な情報だった。

 

治療継続の大きな希望になった。

以降の不妊治療の戦略を立てやすくなった。

 

そしてその思いは無事出産を経て1年が経った今でも変わりない。

むしろ、不妊治療から少し遠のいた今、より冷静な頭で考えてもこの検査は私達には必要なものだったと断言できる。

着床前診断をしなかったとして、移植してもほぼ確実に流産・死産に至る胚を、月に1回しかないチャンスに数十万円かけて移植するほどの余裕は、30代後半にさしかかった私達には無かった。

 

 結果、正常胚を移植した2回目の移植は撃沈したが、3回目の移植で無事妊娠に至ることができた。

3回目の移植に当たって、思い切って年休を多めに取得して体を休ませて臨む勇気を出せたのも、この検査で残る正常胚の数を把握していたおかげだった。

 

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 確認できている正常胚が残り1つしかないことが分かっていなければ、いつ終わるか分からない不妊治療の中、胚盤胞のストックがいくつかあることで逆に、余分な年休を取得する勇気を持つことはできなかっただろう。

 

そして、移植のための地方からの頻繁通院や、増加した仕事を抱え、満身創痍で心身共に疲労の限界を迎えた状態での移植では、今回出産に至った正常胚でも妊娠すらできていなかったかもしれない。

 

今、傍らで眠っている愛しい我が子。この子に会えなかったかもしれない。

そう思うとぞっとする。

 

4.妊娠後に感じた着床前診断のメリット

 何とか妊娠することができたが、夢にまで見たマタニティライフは、出産まで重度の悪阻との闘いだった。

 クリニックの先生の説明によると、着床前診断も万能では無く、0.1%程の確率で外れることもあるとのことだった。高齢出産ということもあり、もし胎児に異常があるのであればそれなりの準備をしてお産を迎える必要がある…と考え、出生前検査の実施も検討していた。

 

 しかし、私が里帰りするまで通っていた広大な地域に一つしか無い産科標榜の総合病院では、関連の検査を一切実施していなかった。

重度の悪阻で入院寸前にまで陥っていた私には、片道数時間をかけて、

事前カウンセリング→検査→検査結果通知

と、何度も通院が必要となる出生前診断のため、都会の病院へ長時間かけて何度も通院できるような状況では無かった。

 結局、赤ちゃんや自身への負担を考え出生前検査の実施を諦めざる得なかった。

 

そこで支えになったのは、着床前診断の結果だった。この検査を受けていなければ、高齢出産で障害を抱えているかもしれない赤ちゃんを普通分娩で無事産み落とせるか、不安でたまらなかっただろう。

着床前診断は、地方住まいが影響して出生前検査を受けることが出来なかった私の心を軽くしてくれた。

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5.私の結論

 私達夫婦にとって着床前診断は、正常な受精卵があることを教えてくれ、治療継続への希望を与えてくれた。集中的に体を休めて移植に臨むタイミングを教えてくれた。

そして、地方住まいの悪阻で出生前診断を受ける選択肢をなくした私の心を軽くしてくれた。

 

 見つけた異常胚をどうするか…等々、様々な議論のある検査だが、私達夫婦には必要な検査だった。

 現在、グレーゾーンで一部のクリニックだけが提供しているこの出生前診断。私は不妊治療の選択肢の一つとして今よりも一般化するべきだと考える。

一般化することで費用もより安価になる可能性もある。そして、出ない結果に絶望する不妊治療患者の不妊原因の究明につながる可能性もある。

批判意見があることも承知だが、その効果を知っているからこそ、不妊治療患者の選択肢の一つとして、より身近なものとなることを願ってやまない。