地方で働きながらの不妊治療!満身創痍

30代後半、地方で働きながら取り組んだ不妊治療の記録です。

8.体外受精への挑戦-④採卵後の卵子ちゃんの経過

 通院していたクリニックでは、状況に応じて初期胚と胚盤胞どちらを子宮に移植するか選択する。

卵子を複数個採取でき、受精後の分裂もうまくいった場合は、初期胚と胚盤胞、それぞれ保存したりすることもあるらしいのだが…、今回はたった1個の卵子しかなかったため、虎の子の卵子ちゃんが無事受精し、初期胚まで成長したら胚盤胞への分裂を待たずに移植しようという方針を、採卵後先生と相談の上決めた。 

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 採卵から2日後の朝、私はクリニック近郊の実家にいた。卵子が無事受精し初期胚への分裂に至ったかは、採卵後2日目の朝判明する、そのため、その日の午前中の指定時間にクリニックに電話し、移植可能となれば、その日の午後の指定時間にクリニックに行かなければならないからだ。

一度凍結し、次の月などに解凍して移植することも可能なのだが、少しマイルドな排卵誘発方法であったため、子宮の腫れも無く、受精卵さえ用意できれば戻せる状態に整っていた。確率は低いらしいのだが、冷凍⇒解凍の過程で受精卵がダメになることもあるらしく、小さなリスクでさえも犯したくない状況。

ということで、私は可能かどうかも分からない移植のため、前日ほぼ定時で職場を飛び出し、実家方面の最終電車(でも夕方)に飛び乗り、実家に泊まって移植に備えていたのだ。まさに博打である。

 

 『祈るような気持ち』というものを、不妊治療を始めて随分頻繫に経験したように思う。普段の生活では中々体験できないような、祈るような気持ちのバーゲンセールであるのだが、その一つ一つが本当に真剣で、今回もまた、祈るような気持ちで指定された時間にクリニックに電話し、たった一つの卵子ちゃんの分裂状況を確認した

うまく受精ができたとしても、分裂が途中で止まり、初期胚までいかずに終わってしまう受精卵は一定数存在するらしく、、、前日の夜はほとんど眠れなかった。

 

 採卵後、受精卵を子宮に戻すための薬も飲んでいる。会社も頻繫に休み、かなりの労力・社会的信用・金銭面などの犠牲を払っていることもあり、ここまできて移植にすら至らない状況だけは避けたいという思いはかなり強くあった

 結果は…家族の期待を背負った虎の子の卵子ちゃんは無事受精を果たし、分裂し、何とか移植可能な初期胚にまで成長してくれていた

この時は不妊治療を始めて、一番神様に感謝した。

うれしいという気持ちよりも、ほっとしたという気持ちの方が強かったように思う。

真っ先に状況を夫に電話連絡し、その後両親に伝え、朝ごはんを食べ、

『順調!順調!』と、異様なハイテンションで移植のためにクリニックに向かった。

 

8.体外受精への挑戦-③いざ採卵へ!

 仕事のストレスがMAXの状態で、採卵日も含めた3回の2日に1回の通院と、服薬、注射3回(採卵前の2回の通院時に注射をしてもらったので、自己注射は1回で済んだ)を経て、心身共に這う這うの体で採卵日を迎えた。

幸いなことに、何とか採卵に足る卵子は卵巣で育ってくれ、そして受精卵を戻すための子宮内膜の厚さも基準値に至った。

 

 様々な意見があるとは思うが、採卵は私にとっては結構しんどいものだった。もちろん局部麻酔はしていたが、始終鈍い痛みはあったし、何とも言えない不快感もあり、もう二度と経験したくない!というものだった。

何より怖い!

通常のエコー検査でさえ中々慣れないのに、卵巣に針を刺して卵子を採取するという作業は想像を絶した。多分、採卵中、その作業をイメージしてしまったせいで、よけいに辛くなってしまったと思う。先生からはずっと『力抜いて!リラックス!』と言われていたが、全ての感情をねじ伏せてそうしたいと思う理性的な自分と、そんなの無理無理!と思う本能的な自分が常に戦っている状況だった。

 

 想像以上にに衝撃的なものだった採卵。

その結果採取された卵子は…1個!

※受精させるに至らない未成熟卵除く

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もともと事前の検査で、成熟した受精に使えそうな卵子は2個程度しか無く、採卵でうまいこと取れればいいが、うまく採取できなかったり、受精がうまくいかなかったりで、移植にも至らない可能性もあるという話は先生から聞いていたので、覚悟はしていた。

が、あれだけ苦労したのに、たった1個しか採取できなかった事実に、私は思いのほかショックを受けた。そして、虎の子の1個の卵子

受精⇒分裂⇒移植

までの全ての希望を託さなくてはいけなくなり、不安MAXに。。。

 

8.体外受精への挑戦-②通院の大変さと仕事量の増加

 体外受精のためには、当然ながら受精させる卵子を体から採取しなければならない。今回、私の選択した少しマイルドな排卵誘発方法では、採卵のタイミングを見計らうために、1~2日毎の通院を2~3回繰り返し、注射や服用薬を調整しながら採卵日を決定する。
これまでの治療で得られた排卵日と思われる日々のデータなどから、事前に大まかな1か月の通院・服薬・事故注射のスケジュールは組まれるが、あくまで予定は未定。その時々の状態でベストと思われるタイミングで通院日や採卵日が決定される。
また、治療がうまくいって卵子を複数採取できた後も、受精が成功するか、その内何個が初期胚もしくは胚盤胞まで分裂し、子宮に戻すことができる状態になるのか、子宮の状況から受精卵の移植をすぐに行うか1~2か月程度置くか、等々、誰にも分らない確率の中で日々状況に応じた判断が必要となってくる。
要は、その場その場で予定が決まるため、治療スケジュールに翻弄され、肉体的・精神的な負担が想像以上に大きかった。そして何より、その間の仕事のコントロールが非常に難しくなった。

 通院が大変になるのは分かっていたことでは?と言われるかもしれないが、実はこの頃から、急遽職場で新規事業の立ち上げが決定し、通常業務を遥かに超えた業務が発生してしまっていたのだ。。。
かと言って、服薬を始めてしまった治療を辞めるわけにもいかず…1日休んで往復6時間かけて日帰り通院し、次の日には出勤、たまった仕事を残業や昼休み返上でカバーし、また休みを取って通院、という流れが採卵日を含めて3回程繰り返された。
 
 直属の上司には1月の最後のタイミング法で妊娠できなかった際に、次月から治療のステップアップ(あえて体外受精という言葉は使わず今までよりもハードな治療に入るという表現にした)により、これまでよりも頻繫に年休をとらなければならない旨は伝えていた。上司は、これまで通り仕事に支障が無い範囲であれば…という反応で、もちろん私の仕事量を軽減するとかそういう話にはならなかったのだが、まさか逆に増大することになるとは…。
増えた仕事は、班内の担当業務により機械的に割り振られたのだが、さらに、担当内容の関係で私以上に仕事が増大してしまった人の分の業務(しかもややこしい)を回されてしまうという状況だった。

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 不妊治療の状況を理解してもらって、仕事量の配慮をしてもらいたいという淡い期待が無かったわけでは無いが、元々上司のスタンスは
『仕事さえ回せるのであればご勝手に』
というものだったので、期待はしていなかった。
しかし!逆に仕事量が増大したことについて、甘えかもしれないが『そりゃないでしょ!』という思いとともに、大した説明も無く、急に、しかも相談もできないタイミングで仕事を振ってきた上司に対して、不信感がむくむくと芽生えていった。不妊治療のことを他の班員には言って欲しくないというのは私の意思で、その上で私の仕事だけ増やされないのでは他の班員に示しがつかないという上司の立場は分かる。。。
でも、このタイミング指導の治療中心だった半年間でさえ、職場に迷惑をかけないよう既にギリギリのラインで必死でやってきたのは知ってるはずだ…報告もしているし。。。

 急に増えた仕事で職場全体がピリピリしだし、ストレス指数は急上昇!心身ともに疲労困憊し、こんな状態で本当に妊娠できるのかという不安を感じつつ採卵に臨んだ。。。
 
 

8.体外受精への挑戦-①排卵誘発方法の選択

 一言に体外受精と言っても、排卵誘発の方法はいくつかある。他クリニックのホームページなどをいくつか見てみると、排卵誘発剤をバンバン使って多くの卵子排卵させる一般的な方法から、1ヶ月に1つ自然に排卵される卵子を利用するものまで、クリニック毎に特徴があり、ポリシーが色濃く反映される部分のようだ。

そして私のクリニックでは様々な方法を提供しており、特別にこの方法を推している!というものは無かった。

 

 結局、医師と相談の上で私が選択したのは、採卵までに7~10回程の排卵誘発の注射と4~5回程の通院が発生する一般的な方法よりも、注射による排卵誘発剤の量を抑えて飲み薬を併用する方法だった。効き目はややマイルドだそうだが、排卵誘発の1日1回の注射が3~4回程ですむのに加え、通院回数も3~5回と少な目で済む。

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 この方法で採取できる卵の数は一般的な排卵誘発よりも少なめになるとのことだった。しかし、場合によっては10回近く注射をしなければいけない一般的な方法よりもまだとっつきやすかったというか…正直、何かの副作用で急遽体調に異変が発生しても、距離や仕事の関係ですぐにクリニックに駆け込むことができない私にとって、体にも負担がかかると言われている一般的な排卵誘発方法にいきなりチャレンジする気には到底なれなかったのだ。

何より仕事を休まなければならない回数が少なくてすむという部分に惹かれた。

この選択は治療の成果よりも、様々な都合に重きを置いた消去法によるものだった。

 

 仕事によって治療が制限されることは仕方が無いと覚悟していたが、人工受精に引き続き、地方在住であることで治療方法にさらに制限がかかることについて、やるせなさを感じざる得なかった。

そして、初めての体外受精に臨むにあたり、体調不良や異常が発生した際、気軽にクリニックに駆け込むことが難しい状況に、大きな不安を感じていた。ただでさえ不安で大変な不妊治療、地方在住だと心身ともに負担がさらに大きくなる。

 

7.タイミング指導から体外受精へ

 8月から始めたタイミング指導だったが、11月から排卵誘発剤(クロミッド)を処方されるようになった。

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薬まで飲んでしまえば妊娠できるのでは…と、その効果に期待を寄せつつ、成果が全く出ないまま季節は冬になっていた。

年齢のこともあり、焦り気味であった私の脳裏には治療のステップアップがよぎるようになった。


 片道3時間程かかるクリニックと家の距離や、充実しているとは言い難い公共交通機関の関係から、人工受精は難しかった。なぜなら、そのクリニックで人工受精を行おうと思ったら、早朝の決められた時間に、採取6時間以内の精子を持っていかなければいけないのだが、在住の地方都市からだと当日家で採取した精子を指定時間にクリニックに持ちこむことが物理的に不可能で、始発に乗って時間通りに着いても2時間以上遅刻してしまう。

さらに、途中、強風や野生動物(主に鹿)を轢いてしまうなどのトラブルによる遅延は日常茶飯事だ。

そのため、人工受精を行うには、精子採取のために、指定日の前日にクリニック近郊のホテルやどちらかの実家に夫に宿泊してもらう必要が発生するが、そうすると夫も仕事を休まなければならなくなる。その割に人工受精の成功率はそこまで高くないとのこと…。

夫の当時の仕事は、期限内に済ませさえすれば融通がきく私の仕事と違い、職場にいて対応することが求められる性格のもので、加えて年末から新年度にかけてぐっと忙しくなるため、時期的に休みにくくなることが分かっていた。

 

 近隣の病院で人工受精に対応している所は無い。夫の仕事が落ち着くまで半年程、このままタイミング指導を続けるか、より確率が上がる体外受精にステップアップするか。。。

時間を無駄には出来ない。

地方と都市部の医療格差の壁にぶちあたり、途方にくれつつ、医師とも相談し、年齢等諸々の状況から総合的に判断し、1月のタイミング指導で結果がでなければ体外受精へと踏み込むことにした。

 

 体外受精は心身だけでは無く金銭的な負担がものすごいらしいということは人づてに聞いていた。さらに、タイミング指導のための月に1回の採血(痛い!)やエコー(棒みたいなのを入れる…何回しても慣れない!)だけでも不快指数マックスなのに、さらに凄いことになる体外受精に移るのは心の底から嫌で恐ろしかった。

何とかタイミング指導で妊娠に至るよう、いつもより食事に気を遣ったりストレッチ体操するなどして、祈るような気持ちで日々を大切に過ごしていたが、無情にも1月の妊娠判定も…陰性…(涙)。

妊娠に至らなかった落胆と、未知なる治療への恐怖で、私は絶望に打ちひしがれた。

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6.タイミング指導

 不妊に関して決定的な原因が見つからなかった私達は、とりあえずタイミング指導で様子を見ることにした。

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毎朝の基礎体温の記録はもちろんのこと、月1回の、

指定日の通院→医師による排卵見込み日に合わせた夫婦生活→自宅で妊娠の有無を確認→絶望(検査結果陰性・生理がくる)→また通院

というサイクルの繰り返しだった。最初の3ヶ月のタイミング指導だけでは成果が出なかったため、途中からクロミッドという排卵誘発剤を処方されたが、薬の副作用も無く過ごすことができていた。

仕事の都合や曜日に関係なく発生する通院、仕事のプレッシャー、食べ物や飲み物など生活全般に気を遣いながら、1ヶ月サイクルで期待と絶望を繰り返すことへの肉体的、精神的な疲労はあったが、まだ何とか仕事は回せていた。さらに、通院日が土日に当たるラッキーな月もあったりで、既に慢性疲労状態だったが、今から思えばまだ気楽な妊活期だった。

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 ただ、年末年始に近づき仕事がどんどん忙しくなる中、出ない成果でネガティブ思考に陥っていた私は、期間限定とは言え地方都市で勤務させられていることについて、会社への恨みをニラニラと膨らませていた。過去記事でも少し触れているが、

baby-waiting-blog.hatenablog.com

 実は会社の本社や夫婦の実家はクリニックがある都市の近郊。私も少し前まで本社で勤務していた。治療の都合に合わせて気軽に泊まることが出来る実家の存在は通院の大きな助けになっていたが、そもそも地方勤務でなければ、通院に丸1日かけなくなくてもよくなるため、時間的・体力的な負担は大幅に減少する。そしてひいてはそれが職場への迷惑軽減にもなる。さらに、治療費には及ばないまでも、往復で一人当たり万単位かかる交通費の負担もほとんど無くなるのだ。

 

 妊活における地方勤務のメリットが全く見当たらない中、当時は勤め人の宿命だと何とか自分に言い聞かせていた。

一方で、事情を明らかにしての異動願いを夫婦揃って出し、タイミング的に異動も何とか可能な地方勤務年数に達していたため、次の4月には異動できるだろうという希望を胸に、歯を食いしばりながら、仕事をしながらの妊活生活を耐え忍んでいたのだ。

 

5.検査結果と費用

 治療がスタートする前からヘトヘトになりながら受けた卵管造影や血液検査等の一連の検査結果は以下のようなものだった。

 

(私)
・子宮に1つポリープがあったため摘出。
・卵管口が平均より小さいことが判明。ただし、妊娠が無理というレベルでは無い。
・その他年相応の数値で、大きな異常は見つからず。
(夫)
精子の運動率が少し微妙。しかし、妊娠が不可能というレベルでは無い。男性の場合、状況によって結果にムラがある場合もあるため、後日もう一度検査することになった。
 ⇒2回目の検査は平均値内。

 

 検査により、二人とも決定的な不妊原因があるわけでは無いことが判明した。

ほっとした。すごくほっとした。

が、喜びも束の間、冷静になるにつれ、

それではなぜこれまで妊娠に至らなかったのか?という疑問が頭をよぎった。

が、卵管造影検査により卵管に液体が通り、妊娠確率が上がるゴールデンタイムに入ったことを医師に告げられ、とりあえず余計なことは考えずにタイミング指導による妊娠に集中することにした。

ポリープも取ったし、タイミング指導まで受けるのだから、特に大きな問題の無い私達なら、きっと何とかなると前向きに考えることにした。


 夫婦の一連の検査による支出は痛かった…。ここまでで約75,000円(交通費別)!健康保険が効かないということがどういうことか、身をもって知ることとなった。これまで大病をしたことも無い私達にとって、この時点で既に病院に支払う金額としては未知のものだったが、将来的にさらにとんでもない金額の医療費がかかることになろうとは、この時は知る由も無かったのである。。。

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